ハリウッドで80年の歴史を持つライティング カンパニー「モール・リチャードソン」直営の撮影用品専門ストア<スタジオ デポ>。「モール・リチャードソン」が設立された1920年代といえば、ハリウッドの照明はまだ白熱電球だけのシンプルなもの。映画撮影用に設計・製造されたライトというものはまだ存在しなかった。そこで、ハリウッドの映画スタジオの電気部門にいたピーター・モールは、1927年にエルマー・リチャードソンと会社を設立。トーマス・エジソンの下で白熱電球の技術者として働いていた経験を生かし、次々と業界向けの照明器具を設計・製造。ハリウッド照明界の基礎を築いていった。(設立後、エルマー・リチャードソンは数年で会社を去る。)
ピーターがもたらした照明技術は当時から大変優れたものとして認められ、映画芸術科学アカデミーにおいて今の科学技術賞が設けられる以前から、特別賞を受賞するなど、高い評価を得ていた。1945年には国際連合の重要会議の照明を担い、世界の歴史的瞬間を文字通り明るく照らす大役を果たしたという。その後もハリウッドでライティング技術の開発に大きな影響を与えたモール・リチャードソン社は、これまでに3度のアカデミー科学技術賞を受賞。ピーター・モール、あるいは彼が執筆した記事は、業界雑誌に幾度も掲載されている。
現在スタジオ・デポでは、プロが必要な小物はもちろんのこと、カメラバッグ、ディレクターズ・チェア、箱馬など、スタジオで使われるあらゆる必需品が幅広く取り揃えられている。売れ筋商品は、テープ、照明用ジェルなどの照明アクセサリーの他、ポーチやベルト、グローブ、ナイフ、工具、フラッシュライトなどの個人向けアイテムだそうだ。また、照明器具の製造、販売、レンタルの他、撮影に使われる消耗品の販売、業界のニーズに応じた照明機材の設計や製造も行う。顧客も、スタジオ、プロダクション会社に加えて、個人のプロフェッショナルや学生など多岐に渡っている。趣味で映画を撮っている個人にも、こんな質の高いサービスが利用可能なのはありがたい。
消耗品は、卸し価格でも販売しているが、小売り店舗でも、ハリウッドのユニオンメンバーと学生には20%割引がある。「価格は日本よりも安めですけど、質にはもちろんこだわりがあります。返品していただいたらかえって商売に響きますしね(笑)。モールライティングは30年は持つんですよ」と経営マネージャー(支配人)のロンさん。ウエブサイトでも商品販売を行っているので、世界のどこにいても注文ができる(世界中に配送可能)。
オンライン上で最も売れているのは、CG合成をする際に必要なグリーン・スクリーン(背景)用のアイテム。大きな背景が必要な場合に壁をペンキ塗りするのだが、そのタイプの商品では100ガロン(379リットル)のオーダーを受けたこともあるそうだ。長い歴史と信頼を培ってきた頼れる老舗は、いまも世界中の映画業界を陰で支えている。
スタジオ デポ / 1927年、ピーター・モールとエルマー・リチャードソンによって創設された「モール・リチャードソン」という照明器具会社を親会社にもつ、照明器具の老舗だ。TV放映が始まる以前の映画業界へ、タングステンライトを提供することから始まり、昨年、創業80周年を迎えた。(公式ウェブサイト / http://www.studiodepot.com/store)
取材場所 | ハリウッド カリフォルニア |
取材 / 撮影 | 堀口 美紀 |
編集 / 校正 | 高田 友美 |
発行人 | 池上 奨 |
版元 | オーガスト マガジン |
当頁は2009年から2011年にかけて発行されたエンタテインメント業界向けの無料情報誌「オーガストマガジン」をオンライン向けに再構成したものです。尚、記事や写真の無断転載及び無断引用は禁止いたします。
撮影関連会社を退社後カリフォルニア州ロサンゼルスに渡米。帰国後<アメリカ製>の雑貨や自転車(Schwinn製)などの輸入販売をオンライン上で開始。2016年。イリノイ州シカゴに拠点を置く仮装用マスク及びコスチュームの製造販売を行うZagone Studios製品の販売を開始。2020年。正式にZagone Studios Japanとして日本国内における同製品の輸入販売業務を開始。趣味はモトクロスバイク / バーベキュー / ピンストライピング / サーフィン / 釣りなど…